概要
これまで、文科省公表データを用いて、6年制薬学部の各進級時にどれ程の数の学生が留年等しているかを示してきた。
ストレートにしろ、留年等紆余曲折を経てにしろ、退学をせず、どうにか6年生まで進級を果たした学生を待ち構えるのが卒業試験である。
この卒業試験を通過しないと、薬剤師国家試験を受験する資格を得られない。
私大薬学部は恐らく全大学に導入されている制度なのではないかと思われるが、国公立大学には存在しない制度なのかもしれない。
難易度は各大学により様々だと思われるが、ちゃんとした大学からFラン大学まで、友人の何人かに聞いたところ、いずれも薬剤師国家試験より難しい問題が含まれていたという見解は一致している。
各私大は、薬剤師国家試験の新卒合格率を少しでも上げるために、ちゃんと勉強をしている合格の可能性のある学生だけを薬剤師国家試験受験にふさわしい学生として選び出し、それ以外の学生の受験資格をことごとく奪い取る。
そこで、薬学部在籍中の薬剤師国家試験受験資格を奪い取られた学生がおおよそどれぐらい生じているのかをグラフ化した。
現在公表されいるデータだけでは、薬剤師国家試験受験資格剥奪、かつ、卒業延期してしまった学生など、求められない学生が存在するので、このグラフは、あくまで、おおよそであって、正確なものではない。
しかし、おおよそであっても、それなりの人数が卒試に阻まれている様子をうかがえる。
利用したデータ
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薬学部における修学状況等の"~年度卒業者入学年度別分布(6年制)"の「今年度」「前年度」「前々年度」「その他」のデータを抽出。
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今年度は「1留」で、その他は「3留以上」だと考えられる。
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- 「今年度」「前年度」「前々年度」「その他」の合計を求め、その『合計』と修学状況等の"国家試験合格状況"の「出願者」を比較。
- 『合計』≧「出願者」なら『合計』を、『合計』<「出願者」なら「出願者」を『卒試受験者数』とした。
- 修学状況等の"国家試験合格状況"の「受験者」を抽出
大学間で『合計』と「出願者」に差異が見られるのは、いくつかのケースが考えられる。
- 『合計』>「出願者」>「受験者」の大学
- 卒試が複数回あって、卒業確定、出願確定、受験確定が段階を経て決まるケース
- 6年生全員を出願させ、卒試をクリアしなかった学生(薬剤師国家試験受験資格剥奪)は、例えば、薬剤師国家試験当日に卒試の再試験を実施し、それをクリアすれば、卒業確定するケース
薬剤師国家試験受験資格は剥奪しても、卒業は比較的許してくれる大学(母校はこのタイプだった)
- 「出願者」>『合計』>「受験者」
- 6年生全員に出願させ、段階を経て決まるケース
- 先述と同様だが、卒試の再試験もそれなりに厳しいケース
- 「出願者」≒「受験者」
- 卒試をクリアした学生に出願させるケース
計算式
- 『卒試落第者数』=『卒試受験者数』-「受験者」
- 『卒試落第率』=(『卒試落第者数』/『卒試受験者数』)×100
注意点
- 『卒試受験者数』は留年等経験者も含まれる。
- 『卒試落第者数』は、卒試をクリアしていたものの、病欠など何らかの理由で、薬剤師国家試験を受験しなかった学生も含まれる。
- 『卒試受験者数』=『合計』の場合、『卒試落第者数』は全員卒業が確定している。
- 繰り返しになるが、真の卒試落第者数は、卒試をクリアできず、卒試の再試験もクリアできず、卒業延期確定学生を求めなければならない(現在公表されているデータだけでは、求めることができない)。
- ゆえに、このグラフは正確ではないし、卒試落第者数の実態はこのグラフで求めた数値よりも大きくなるものと考えられる。
- 『卒試受験者数』=「出願者」かつ「出願者」>>「受験者」の場合、もしかしたら、真の卒試落第者数にかなり近い『卒試落第者数』となっているかもしれない。
6年制薬学部、卒業試験落第率・落第者数ランキング
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6年制薬学部、卒業試験落第率・落第者数推移
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見られない時はこちら)
コメント
これまでに、薬学部の各年次において、どの程度留年者が出ているかを示してきた。
どの年次も留年することなく、最後の卒業試験をクリアして、やっと薬剤師国家試験の受験資格を得られる。
最後の最後である国家試験を見事合格すれば、ストレート合格となる。
留年者数のグラフと、この卒業試験のグラフで、距離感みたいなものが見えてくるのではないだろうか。