薬剤師の養成定員、抑制の検討も卒後研修、臨床系教員充実求める
レポート 2021年6月17日 (木)配信水谷悠(m3.com編集部)
薬学部「入学定員の抑制も」 厚労省検討会が提言案: 日本経済新聞
↑これらに対するコメント
記事の要点は次の通り。
- 将来、薬剤師過剰の見通し
- にも関わらず、薬学部定員8,000人→1万3,000人
- 定員多すぎ、考えないとね
- 一方でFランの定員割れは酷いよね
- 定員増えたのに薬学部のない県があったり、薬局薬剤師に比べて病院薬剤師が少なかったり、偏在も問題
これら記事に対する感想は
少なくとも、薬学部数増加と将来の薬剤師過剰とは無関係じゃね?ということ。
確かに、薬学部数も定員も増えている。
1977(昭和52)年までの緩やかな増加に比べ、2003(平成15)年~2008(平成20)年の伸びは著しい。
この間に設立された薬学部は「新設大学」と呼ばれ、「旧設大学」と呼ばれる既存の私立大学薬学部とは区別されることも多い。
定員8,200人→11,602人(+大学院進学なしには国家試験受験資格のない4年制1,448人=13,050人)、1.4倍(1.6倍)に増加したことが資料からうかがえる。
では、薬剤師国家試験合格者数はどうか。
(見られない時はこちら)
(1回~20回学説試験受験者数37,716人、合格者数28,144人、合格率74.6%。
1回~19回実地試験(20回より学説+実地となる)受験者数30,265人、合格者数27,998人、合格率92.5%)
例えば、特別な理由が無かったと思われるものの比較的合格者数の少なかった1992年(77回)の7,497人に1.4を掛けると10,496人となるが、パッと見で、定員数が急増した後、常にそれだけ合格者数が出ているとはいえないのではないだろうか。
グラフからは、定員が増えた割には、合格者数はそれほど変わっていないようにさえ思える(やや増加傾向かもしれない)。
仮に4年制が続いていたとしたら、6年制移行期の94回で合格できなかったロクデナシ(もちろん、自分の人間性もここに含まれ、最大限の親しみを込めている)しか受験しなかった95,96回の合格者数も、例年通り、それぞれ8,000人程度出ていたのではないだろうか。
95回~106回全合格者の1試験あたりの平均合格者が8,292人であったことからも、新設大学群により薬学生の数は増えたかもしれないが、少なくとも現時点では、薬剤師の需給を狂わす程の影響力を発揮しているとは到底思えない。
しかも、
2003年~2008年までの間に開学した薬学部28校のうち、上記16校は恒常的に定員割れを起こしているわけだから、影響力としては、今後、益々減少し続けるだろう。
以上のことから、薬剤師過剰の問題を新設大学群のせいとするには根拠が乏しい。
過去の資料を読んだり、合格者数グラフを見たりしていると、仮に、薬学部が旧設大学だけであったとしても薬剤師過剰は叫ばれていたと確信してしまう程、薬学部行政がいまいちなのは今に始まったことではないということが分かる。
つまり、薬剤師過剰の問題は新設大学の有無に関わらず必ず起きていたとは思うものの、新設大学群のせいでそのタイミングが早くなったとはいえない(遅くもなっていない)。
6年制検討段階で国公立と旧設大学の定員数を、毎年とか何年かに一度とか、慎重に増減させていれば、新設大学は不要だったかもしれない。
(6年制移行と新設大学のせいで、私立大学薬学部全体の偏差値は大きく低下した。
これは新設大学群の影響も大きいと思う)。
ただ、Fランが無かったら俺は確実に薬剤師にはなれなかった。
ということは、もしかすると、旧4年制薬学部に入学する力のない、本来、薬剤師になれなかった(あるいは、なるべきでなかった)、質の悪い薬剤師があなたの近くにいるかもしれませんよ。
イーーヒッヒッヒ。
*1:2021年3月試験回次別合格者数の推移:https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/sankou1.pdf
*2:第87回薬剤師国家試験の合格発表について
*3: 第81回薬剤師国家試験の合格発表について:https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/0804/92.html
*4:1150 薬剤師免許の 行方 - J-Stage:https://www.jstage.jst.go.jp/article/faruawpsj/25/11/25_KJ00001720634/_pdf/-char/ja
*5:薬事関係データ版.2010,東京都,薬務公報社,P963